「カレーってなに?」 byインド人

先日、日本で生活されている中国出身のお友達が日本食をいろいろ送ってくださいました*1。本当にありがたいです。そのなかに日本のカレー(温めたらすぐに食べられるの)も入っていました。しかし、インドでは郵便物の取り扱いが丁寧[ていねい]ではないようで、悲しいことに地元[じもと]の郵便局に届いたときには、カレーの袋に小さな穴が空[あ]いて中味[なかみ]が飛び出てしまってました*2

局員の何人かは、「気の毒[どく]だなぁ」ってのと「でも、おれ文句言われるのいやだなぁ」って感情が共存[きょうぞん]した複雑な表情をしていました。あくまでわたしの推測[すいそく]ですけどね。

ある局員が「それは何だ?」って聞いてきたので、「カレーだ」と答えました。そしたら、その局員曰[いわ]く「カレーってなに?」だって! わたしにとっては非常におもしろい発言を聞くことができました。インド人が「カレーってなに?」と言うなんて、一世代前[ひとせだいまえ]の日本人には想像もできなかったことではないでしょうか。「ニホン人もびっくり」です*3

ご存知の方も多いと思いますが、じつはインドに「カレー」という料理は元々なかったみたいです。「カレーの起源」で検索[けんさく]すると情報を得られるので興味のある方はどうぞ。例えばこちらなど。 そういう訳で、レストランに行っても「カレー」というメニューはありません。「○○マサラ」というのがどうやらわたしたちがイメージしている「カレー」を指[さ]すようです。ついでに言うと、以前わたしはインドでは「ナン」が主食だと思ってましたが、どうやらナンよりも「チャパティ」の方がポピュラーみたいです。たしかにナンはおいしいですが、ちょっとヘビー*4です。毎日食べるのにはチャパティの方が向いています。

さて、いただいた日本のカレーですが、穴が空いて中味が出てしまったものの、袋を触[さわ]ってみるとまだたくさん残っていました。「覆水盆[ふくすいぼん]に返らず」、こぼれてしまったカレーは仕方ありません*5。それよりも残ったカレーの方が大事。残りをありがたく頂戴[ちょうだい]することにしました。食堂でチャパティをもらってきて一緒に食べました。


空気に触[ふ]れて酸化[さんか]してしまったのか、少し酸[す]っぱくなってました。でもわたしは満足です。食べ物はおいしさも大事ですけど、その食べ物の背景にある「物語[ものがたり]」(と言うと、ちょっと大袈裟[おおげさ]かもしれませんが)は味と同じくらい、あるいはそれ以上に価値があると思うからです。日本から遠いインドまで災難に遭[あ]いながらわざわざやって来てくれたカレーです。ごちそうさまでした。

*1:あ、他の方に贈[おく]り物を催促[さいそく]しようという腹黒[はらぐろ]い考えからこのエントリを書いたわけではありませんのでw

*2:もしかしたら飛行機で運ばれている最中にダメージを受けたのかもしれませんが。

*3:かなり以前に日本のカレーのCMで「インド人もびっくり」というフレーズが使われ、一時[いちじ]流行したそうです。わたしはこのCMをリアルタイムでは見ていません。

*4:「胃にもたれる」とか「胃に負担がかかる」、「簡単には消化できない」という意味。

*5:念のために言うと、この諺[ことわざ]は「一度してしまったことは取り返しがつかないということ」(『スーパー大辞林』より)という意味です。